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旧刑訴法適用事件について再審が開始されて第1審判決及び控訴審判決が言い渡され,更に上告に及んだ後に,当該再審の請求人が死亡しても,同請求人が既に上告審の弁護人を選任しており,かつ,同弁護人が引き続き弁護活動を継続する意思を有する限り,再審の手続は終了しな

事件番号 平成19(れ)1
事件名 治安維持法違反被告事件
裁判年月日 平成20年03月14日
法廷名 最高裁判所第二小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
原審裁判所名 東京高等裁判所
原審事件番号 平成18(う)1036
原審裁判年月日 平成19年01月19日
判示事項
裁判要旨
1 旧刑訴法適用事件について再審が開始された場合,その対象となった確定判決後に刑の廃止又は大赦があったときは,再審開始後の審判手続においても,同法363条2号,3号の適用があり,免訴判決が言い渡されるべきである
2 旧刑訴法適用事件についての再審開始後の審判手続においても,被告人は免訴判決に対し無罪を主張して上訴することはできない
3 旧刑訴法適用事件について再審が開始されて第1審判決及び控訴審判決が言い渡され,更に上告に及んだ後に,当該再審の請求人が死亡しても,同請求人が既に上告審の弁護人を選任しており,かつ,同弁護人が引き続き弁護活動を継続する意思を有する限り,再審の手続は終了しない
主文
本件各上告を棄却する。
理由
被告人5名の弁護人大島久明ほかの上告趣意のうち,最高裁昭和22年(れ)第73号同23年5月26日大法廷判決・刑集2巻6号529頁を引用して判例違反をいう点は,原判断が同判例の趣旨に沿うものであることが明らかであって,実質において単なる法令違反の主張にすぎず,東京高裁昭和36年(お)第1号同40年12月1日決定・高刑集18巻7号836頁を引用して判例違反をいう点は,同判例が,所論のような趣旨までをも示したものではないから,前提を欠き,その余は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であって,いずれも適法な上告理由に当たらない。
なお,所論にかんがみ,職権で判断する。
1 本件は,第二次世界大戦下,言論・出版関係者数十名が,治安維持法違反の被疑事実で検挙され,うち多くの者が,同法違反の罪により起訴されて,昭和20年9月までの間に有罪判決を受けたという,いわゆる「横浜事件」に関する再審事件であるところ,記録によれば,本件の経過は,次のとおりである。
(1) A,B,C,D及びE(以下「被告人5名」という。)は,いずれも治安維持法違反の罪により横浜地方裁判所に起訴されたが,同裁判所は,昭和20年8月29日から同年9月15日までの間に,被告人らの自白を証拠として,同法1条後段及び10条違反の事実を認定し,被告人5名に対して,いずれも懲役2年,執行猶予3年の各有罪判決を言い渡し,各判決は上訴されることなく確定した(以下,被告人5名に対するこれらの判決を総称して「原確定判決」という。)。(2) その後,被告人5名はいずれも死亡したが,平成10年8月14日,被告人5名の妻又は子である請求人らは,原確定判決につき,無罪又は免訴を求めて本件再審請求を横浜地方裁判所に行った。
(3) 横浜地方裁判所は,平成15年4月15日,本件再審請求につき,取り調べた鑑定書等の証拠によれば,昭和20年8月14日に我が国がポツダム宣言を受諾し,同宣言が国内法的効力を有するに至ったことにより,本件で適用された治安維持法1条,10条は実質的にその効力を失ったと解され,旧刑訴法363条2号にいう「犯罪後ノ法令ニ因リ刑ノ廃止アリタルトキ」に当たるから,同法485条6号にいう「免訴ヲ言渡(ス)…ヘキ明確ナル証拠ヲ新ニ発見シタル」場合に該当すると判断して,被告人5名の再審を開始する決定をした。
(4) これに対し,検察官が各即時抗告を申し立てたところ,東京高等裁判所は,平成17年3月10日,上記(3)の判断には疑問があり,免訴を言い渡すべき明確なる証拠を新たに発見した場合に当たるとした上記再審開始決定は,にわかに是認できないけれども,請求人らの提出した証拠によれば,原確定判決に証拠として挙示された被告人らの自白の信用性には顕著な疑いが生じたといえ,上記請求人らの提出証拠は,被告人5名に対し,無罪を言い渡すべき,新たに発見した明確な証拠であるといえるとし,結局,旧刑訴法485条6号の事由があるので,本件再審請求は理由があるから,上記再審開始決定は結論において正当であるとして,検察官の各即時抗告を棄却し,同決定は確定した。
(5) 本件再審の第1審が,横浜地方裁判所で開始されたところ,同裁判所は,平成18年2月9日,要旨,
(ア) 被告人5名は,治安維持法1条後段,10条に該当する行為をしたとして起訴された,
(イ) 同法は,昭和20年10月15日に「治安維持法廃止等ノ件」と題する昭和20年勅令第575号が公布・施行されたことにより,同日廃止され,また,同月17日,同年勅令第579号による治安維持法違反の罪についての大赦令が公布・施行されたことにより被告人5名は大赦を受けた,
(ウ) 公判裁判所が公訴について実体的審理をして有罪無罪の裁判をすることができるのは,当該事件に対する具体的公訴権が発生し,かつ,これが存続することを条件とするのであり,免訴事由の存在により公訴権が消滅した場合には,裁判所は実体上の審理を進めることも,有罪無罪の裁判をすることも許されない,
(エ) そうすると,本件被告事件について,被告人5名には,旧刑訴法363条2号(刑の廃止)及び3号(大赦)に該当する免訴事由があるから,免訴判決をもってのぞむのが相当であるとして,被告人5名をいずれも免訴する判決(以下「本件第1審判決」という。)を言い渡した。
(6) これに対し,弁護人が各控訴を申し立てて,被告人5名を免訴した本件第1審判決は違法,不当であると主張し,無罪判決を求めたところ,原審の東京高等裁判所は,平成19年1月19日,免訴判決は,被告人に対する公訴権が後の事情で消滅したとして被告人を刑事裁判手続から解放するものであり,これによって被告人はもはや処罰されることがなくなるのであって,このことは再審の場合においても通常の場合と異なるところはないから,免訴判決に対し,被告人の側から,免訴判決自体の誤りを主張し,あるいは無罪判決を求めて上訴の申立てをするのはその利益を欠き,不適法であるとして,旧刑訴法400条により各控訴を棄却する判決(以下「本件原判決」という。)を言い渡した。
(7) そこで,弁護人が,同日,本件各上告に及んだ。
2 弁護人は,この救済という再審制度の趣旨に照らし,再審の審判においては,実体的審理,判断が優先されるべきであるから,その判断をせず,旧刑訴法363条2号及び3号を適用して被告人5名を免訴した本件第1審判決は誤りであり,被告人の側には本件第1審判決の誤りを是正して無罪を求める上訴の利益が認められるべきであるのに,本件第1審判決の判断を是認した上,上訴の利益を認めなかった本件原判決は,同法511条等の解釈適用を誤っていると主張する。
しかしながら,再審制度がいわゆる非常救済制度であり,再審開始決定が確定した後の事件の審判手続(以下「再審の審判手続」という。)が,通常の刑事事件における審判手続(以下「通常の審判手続」という。)と,種々の面で差異があるとしても,同制度は,所定の事由が認められる場合に,当該審級の審判を改めて行うものであって,その審判は再審が開始された理由に拘束されるものではないことなどに照らすと,その審判手続は,原則として,通常の審判手続によるべきものと解されるところ,本件に適用される旧刑訴法等の諸規定が,再審の審判手続において,免訴事由が存する場合に,免訴に関する規定の適用を排除して実体判決をすることを予定しているとは解されない。これを,本件に即していえば,原確定判決後に刑の廃止又は大赦が行われた場合に,旧刑訴法363条2号及び3号の適用がないということはできない。したがって,被告人5名を免訴した本件第1審判決は正当である。そして,通常の審判手続において,免訴判決に対し被告人が無罪を主張して上訴できないことは,当裁判所の確定した判例であるところ(前記昭和23年5月26日大法廷判決,最高裁昭和28年(あ)第4933号同29年11月10日大法廷判決・刑集8巻11号1816頁,最高裁昭和29年(あ)第3924号同30年12月14日大法廷判決・刑集9巻13号2775頁参照),再審の審判手続につき,これと別異に解すべき理由はないから,再審の審判手続においても,免訴判決に対し被告人が無罪を主張して上訴することはできないと解するのが相当である。以上と同旨の本件原判決の判断は相当である。
なお,当裁判所の調査によれば,被告人(故)Dについて本件再審請求を行ったFは,本件原判決後の平成19年9月2日に死亡したことが認められるが,再審の審判手続が開始されてその第1審判決及び控訴審判決がそれぞれ言い渡され,更に上告に及んだ後に,当該再審の請求人が死亡しても,同請求人が既に上告審の弁護人を選任しており,かつ,同弁護人が,同請求人の死亡後も引き続き弁護活動を継続する意思を有する限り,再審の審判手続は終了しないものと解するのが相当であるから,当裁判所は,被告人(故)Dに対しても,本判決を言い渡すものである。
よって,刑訴法施行法3条の2,刑訴法408条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
なお,裁判官今井功,同古田佑紀の各補足意見がある。

裁判官今井功の補足意見は,次のとおりである。
私は,本件各上告を棄却すべきものとする法廷意見に同調するものであるが,弁護人の所論にかんがみ,再審の審判手続において免訴事由が存在する場合の実体的審理,判断の可否について,補足して述べておきたい。
通常の審判手続においては,免訴事由があるときは,有罪無罪の実体判断をすることは許されず,免訴の判断をすべきであるとするのが,法廷意見で引用する昭和23年5月26日大法廷判決を始めとする当裁判所の確定した判例である。再審の審判手続についてこれと別異に解すべきか否かが,本件において問われている問題である。弁護人は,被告人は有罪の確定判決によって様々な不利益を受けているのであるから,無この救済という再審制度の趣旨に照らし,再審の審判手続において,無罪判決という有罪の確定判決を否定する判決を得なければ,有罪の確定判決により被った不利益を解消することはできないとして,免訴事由があっても実体的審理判断が優先されるべきであると主張する。
再審は,有罪の確定判決に対し,有罪の言渡しを受けた者に有利であるような証拠が新たに発見された場合等に,改めて審理をし直し,裁判をする制度であり,再審が開始され,再審の審判手続における裁判が確定したときには,先にされた有罪の確定判決は,完全にその効力を失うことは異論を見ないところである。そして,免訴判決は,有罪無罪の実体判決をする訴訟条件がないことを理由とする形式裁判であり,免訴事由が存在するときには,さらに実体についての審理判断をすることなく,その時点で審理を打ち切ることが被告人の利益にもなるのであって,このことは再審の審判手続においても通常の審判手続と変わることはない。本件のように有罪の確定判決を受け,死亡した被告人にとっては,審理打切りによる利益はほとんどないということができるであろう。しかし,再審の審判手続において免訴事由が存在する場合の実体的審理,裁判の可否については,本件のような再審事由の場合のみでなく,他の再審事由により開始された場合も含めた再審の審判手続全般を通じて考察しなければならず,再審の審判手続においても審理打切りによる被告人の利益は存在するものと解される。そして,再審の審判手続において免訴判決がされることによって,有罪の確定判決がその効力を完全に失う結果,これによる被告人の不利益は,法律上は完全に回復されることとなる。
もちろん有罪の確定判決があったという事実自体は,再審の審判手続における免訴判決があったからといって,覆しようのないことであるが,このことは仮に再審の審判手続において弁護人の主張するような無罪判決があったとしても同様である。再審制度は,有罪の確定判決の誤りを正し,これによって様々な不利益を受けた被告人を救済するものであるが,それは,有罪の確定判決の効力を失わせることによって実現されるにとどまるといわなければならない。
もっとも,旧刑訴法515条の規定を考慮すれば,免訴を有罪を前提とする実体判決とした場合には,弁護人の主張にも傾聴すべき面もないわけではないが,前記のとおり,免訴は有罪を前提としない形式判決であり,かつ,刑事補償法25条において,免訴の裁判を受けた者は,もし免訴の裁判をすべき事由がなかったならば無罪の判決を受けるべきものと認められる充分な事由があるときは,無罪判決を受けた者と同様の刑事補償を請求することができるものとするとともに,補償決定の公示の規定も定め,免訴判決を受けた被告人に対する刑事補償や名誉の回復について一定の配慮をしているところ,再審の審判手続において免訴判決があった場合にも同条が適用される(本件の場合にも同条が適用されるものと解されることは,古田裁判官の補足意見のとおりである。)ことからすれば,明文の規定がないにもかかわらず,他の再審事由による再審と取扱いを異にして免訴の規定の適用を排除すべき理由に乏しいものといわざるを得ない。

裁判官古田佑紀の補足意見は,次のとおりである。
私は,法廷意見に同調するものであるが,第1審判決が本件における刑事補償の可否について述べていることにかんがみ,この点に関し,以下の点を敷えんして述べておきたい。
第1審判決は,刑事補償法附則9項により,本件についても,刑事補償の対象となり得るとするものであって,私もこの説示を正当と考えるものであるが,免訴の裁判に関しては,同法施行後に裁判があった場合でも,施行前に行われた勾留等については,同法附則3項により補償されないこととなるとする同法制定当時の見解(横井大三「新刑事補償法大意」187頁)も存するところである。
確かに,附則3項は刑事補償法施行前に生じた事項全般についての経過措置を定めたものであり,「施行前に生じた事項」には,補償の原因である無罪等の裁判だけではなく,補償の対象となる抑留等も含まれると解されることからすれば,同項の文言からは上記のような見解も成り立たないわけではない。
しかしながら,刑事補償は,無罪等の裁判があった場合に,その事件に関して刑事手続により行われた身体の拘束について補償をすることを目的とするものであるから,無罪等の裁判が施行後にあった以上,拘束が施行前に行われたものであるかどうかを問わないのが合理的であって,旧刑事補償法についても同様の理解がなされており,現行刑事補償法の制定に際してそのような考えが否定されたような事情はうかがえず,附則3項中,補償の対象に関する部分は確認的なものにとどまるというべきである。また,同項の規定の位置や,同項については,国会における修正により刑事補償法25条が加えられたことに伴い,同条が施行後に裁判があった場合に限り適用することとされたことに関連して,政府原案が修正されたものであることなども考慮すれば,同項は,専ら無罪等の裁判が現行法施行前にあった場合に関する規定と解することが相当であって,同法施行後に,刑訴法施行法2条により旧刑訴法によって無罪等の裁判があったときは,附則9項のみが適用されると解すべきものと考える。
(裁判長裁判官今井功裁判官津野修裁判官中川了滋裁判官
古田佑紀)
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